私とは何か―「個人」から「分人」へ:平野啓一郎著【20240821配信】
これはPSYCHE Morning Tips 第3回の配信内容のまとめです。
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こんにちは、読者の皆さん。今回は、小説家として活躍している平野啓一郎氏のベストセラー「私とは何か」から学んだ、本当の自分とは何かについてお話しします。
本当の自分とは
私たちは相手によって出す自分を変えています。例えば、会社にいる時の真面目な自分、友達といる時の陽気な自分、好きな人の前での真摯な自分、苦手な人に見せる不機嫌な自分...。
では、一体どれが本当の自分なのでしょうか?家族といる時の自分?友達といる時の自分?それとも恋人と一緒にいる時の自分?
平野氏は、この「本当の自分」を探す旅が、実は多くの人を苦しめているのではないかと指摘しています。なぜなら、もし家族といる時の自分が「本当の自分」だとすると、会社や友達といる時の自分は「偽りの姿」ということになってしまいますよね。
そこで平野氏が提案するのが、「分人」という考え方です。
分人という考え方
「分人」とは、平野氏が作った言葉で、私たちが持っているさまざまな顔や人格のことを指します。
例えば、会社で仕事をしている時は分人A、友達と一緒にいる時は分人B、恋人と二人きりでいる時は分人C、というように、状況に応じて異なる分人が表に出てくるという考え方です。
重要なのは、これらの分人全てが「本当の自分」だということです。つまり、たった1つの「本当の自分」など存在せず、いろんな人に見せる自分が全て本当の自分なのです。
この考え方を理解すると、人間関係の見方が変わってきます。例えば、SNSで悪口を言っている人を見て「本性がドス黒い」なんて決めつけなくなります。それはその人の持つ分人の1つに過ぎないんだ、と考えられるようになるのです。
分人はどのように決まるのか
では、どの分人が出てくるかは、どうやって決まるのでしょうか?
平野氏によると、分人は自分と相手、そして環境の3つが影響し合って決まるそうです。
例えば、乱暴なタクシー運転手に乗った時、自分の態度も悪くなってしまった経験はありませんか?これは、相手(タクシー運転手)によって、自分の中の不機嫌な分人が引き出されたということなのです。
つまり、ある意味で私たちの人格の半分は、相手や環境で決まっているとも言えるのです。だからこそ、自分の好きな分人が出やすい環境や人間関係を選ぶことが大切になってきます。
自分を好きになる方法
さて、こんな風に考えると、自分のことを好きになるのは難しそうに思えますよね。でも、平野氏はこう言っています。「自分の全てを好きにならなくていい。まずは一部の分人を好きになることから始めよう」と。
例えば、友達といる時の陽気な自分が好き、筋トレしているストイックな自分が好き、といった具合に。自分の全部は好きになれなくても、一部でも好きな部分があれば、そこから自分を受け入れていけるのです。
幸せになるには、自分の好きな分人が出てくる時間を増やすことが大切です。苦手な人や環境にいる時間をできるだけ減らし、自分の好きな分人が出てくる相手や環境で過ごす時間を増やしていくのです。
最後に、新しい分人を作る方法として、平野氏は一人旅を勧めています。慣れ親しんだ環境を離れ、新しい場所で新しい人と出会うことで、自分の中に新しい分人が生まれる可能性があるのです。
まとめ
今回のポイントをまとめると以下のようになります:
- たった1つの「本当の自分」など存在しない
- いろんな人に見せる自分は全て本当の自分である
- 分人は自分と相手、環境の3つが影響し合って決まる
- 自分の全てを好きにならなくていい。まずは一部の分人を好きになることから始める
- 幸せになるには、好きな分人が出てくる時間を増やす
- 一人旅は新しい分人を作るいい機会
この「分人」という考え方、最初は難しく感じるかもしれません。でも、これを理解すると、自分や他人に対する見方が変わってくるのです。
皆さんも、今日から自分の中にある様々な分人に目を向けてみませんか?そして、どんな時にどんな分人が出てくるのか、観察してみてください。
それでは、今日も一日、あなたの好きな分人が多く顔を出せますように。